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S/4HANA Cloudの拡張開発について~In-App拡張~


はじめに 

この記事ではSAP(企業内の全ての業務を一元的に管理するシステム)の一つである、S/4HANA Cloudの拡張機能の一つであるIn-App拡張について記載しています。

もう一つの拡張方式であるSide-by-Side拡張については過去の記事をご覧ください。

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 拡張方式の紹介 

 In-App拡張

SAP S/4HANA Cloud内に提供されている、カスタマイズ用アプリケーションを用いて拡張する方式です。 

S/4HANA Cloudの環境内で、画面項目の追加や、レポートフォームの作成など簡易的に拡張できるのが特徴ですが、バージョンアップの影響を受けることがあります。

 Side-by-Side拡張

Side-by-Side拡張とは、SAP S/4HANA Cloudとは別にSAP社が提供している、SAP Business Technology Platform(通称:BTP)を用いて、システム外に拡張する方式です。

この記事では、前者のIn-App拡張について紹介します。

機能の紹介

カスタム項目

S/4HANA Cloudの各伝票のヘッダや明細単位で、画面上に新しく項目を追加することができます。

追加した項目は各伝票に関連する帳票やAPIのデータソースに追加することも可能です。

「受注伝票→出荷伝票」などSAP標準として備わっている範囲であれば、自動で後続伝票に値を引き継ぐ設定もできます。

カスタムCDSビュー

S/4HANA Cloud上ではオンプレのようにSE11やSE16のようにテーブルを自由に閲覧できる機能がなく、標準であるレポートや管理機能のアプリを使用して各伝票などのデータを見る必要があります。

しかし実際に見たい項目がないこともあり、SAPが標準で用意している標準ビューから業務目的に沿うビューを作成するために使用します。

カスタムCDSビューを作成するだけでは、ユーザや開発者は自由にデータを見ることができないため、後述のカスタム分析クエリでレポートアプリを作成するか、API公開することでOdataAPIとしてデータ取得を行えるようにすることが必要です。

カスタム分析クエリ 

カスタム分析クエリとはデータベースから欲しいデータを直感的に引き出すことができる機能です。

通常のデータベースの場合、内部結合や外部結合、必要なデータのみを持ってくるためにはどのパラメータが必要なのかを考えてSQL等を書かなければなりませんが、カスタム分析クエリの場合はどのデータをどの条件で持っていきたいかを選択するだけで済みます。

処理に時間がかかるクエリの処理工数を指定する機能もあり、新しいデータを追加する「ランタイム拡張性」もサポートされています。また、ゼロを含む行や列を非表示にする設定も可能です。

また、プレビュー機能を備えており欲しいデータが要求通りのものになっているかを確認することも容易にできます。

カスタムタイル

カスタムタイル上に設定したURLをS/4HANACloud上の画面から接続することができる機能です。

BTPで開発したアプリケーションやレポート、さらに外部のWEBサイトまで、幅広いコンテンツをホームページから直接起動することができます。また、要件に合わせて名前、アイコン、色をカスタマイズすることもできます。

カスタムタイルを活用することで、頻繁に使用する機能をホームページ上に配置し、ユーザーは複雑な検索を行うことがなく、必要な情報に素早くアクセスすることがきます。

まとめ

In-App拡張はSide-by-Side拡張と異なり、ABAPやJavaを使わず簡易的にS/4HANA Cloudをカスタマイズすることができます。

前回の記事も併せてご覧いただき、In-App拡張とSide-by-Side拡張を選択する際の参考となれば幸いです。

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参考資料

・SAP S/4HANA Cloud の拡張と統合

https://help.sap.com/docs/SAP_S4HANA_CLOUD/0f69f8fb28ac4bf48d2b57b9637e81fa/7139c1648de84c0bbd7637589ed7c92a.html